One Hundred Aspects of the Moon: Japanese Woodblock Prints by Yoshitoshi Paperback – Illustrated, January 1, 2003

最初にこの作家を知ったのが、月を眺める老いた狐の姿でした。どうしても他のも見たくて見つけたのがこの本ですがこれだけの作品の枚数を収めて、作品そのものを飾ることなく整然と紹介した所が「素晴らしい作品を身近に親しみ楽しみたい」私には非常に良かった。私はこの方が幽霊や血なまぐさい絵が有名な画家とは随分長く知らずに居たのですがこちらの作品群なら、私の様に怖い絵は苦手な方でも安心して、この作家の精密で美しい線と技巧が織りなす絵を楽しめます。

日本のサイトや展覧会ではなかなか全作品を観る事が出来ないので、調べてみたら、この洋書が見つかりました。作者は幽霊みたいなおどろおどろしい浮世絵師なのですが、唯一、粋な人物ばかり写実した作品です。作品が出会った粋な江戸の人物を艶っぽく表現してある素晴らしい作品集です。

芳年の傑作を凝ったレイアウトをすることなく淡々と紹介しています。図版は約15cm×10cm、ちょっと小さめですがきれいな印刷でしぶいです。赤をもっとどぎつくしてもよかったのでは、と思いますが落ち着いた質感は素敵です。解説文は英文ですが簡潔で（Tairo no Kiyotsune、とか微妙な詳しさでニンマリします）勉強になります。ファンでなくても、手元に置きたくなる本ですね。

「いわゆる大判で紙の質がきれいな画集」ではありません。サイズもそんなに大きくなく、少しの説明とともに、淡々と100枚が綴られている。ですが、廉価ですし、気になったときにすぐ出してパラパラと気軽に鑑賞できるというのも悪くないです。100枚揃って鑑賞できる画集はほかにほとんどありませんし。願わくば、しっかりした時代考証による解説があるような綺麗な画集が、日本からでれば一番いいんですがね・・・。

芳年の作品群の中でも一番大きなシリーズであろう「月百姿」の全部を見ることができる。オールカラー。それも「月百姿」のオリジナル（復刻版でも同じだろう）１枚の半額以下で。 図版はあるアメリカ人夫妻が２６年の歳月をかけて収集した選り抜きの良コンディションの１００枚。それぞれ短い解説も付いている。正にお買い得の１冊だと思う。

月百姿が全て揃ってこのお値段は奇跡的とも言えるのですが、レイアウト重視のためか、絵が小さいので迫力に欠けるのは残念です。そして絵の保存状態が決していいとは言えず、シミが多いのも気になりました。「この値段なら仕方ない」といった割り切りが必要かも知れません。